2026年9月5日
牛肉と豚肉、東西の境目はどこにあるのか
「西は牛、東は豚」と言われます。総務省の家計調査で52市を並べてみたら、線ははっきり出ました。ただし、思っていたのとは少し違う形で。
「西日本は牛肉、東日本は豚肉」。どこかで聞いたことがある話だと思います。すき焼きに何の肉を入れるか、肉じゃがは牛か豚か。そういう話題で必ず出てきます。
これは本当なのか、数字で確かめられます。総務省の家計調査は、県庁所在市と政令指定都市の52市について、1世帯が1年間に牛肉と豚肉をそれぞれ何グラム買ったかを記録しています。
牛肉を豚肉で割った比率で、52市を並べてみました。
線は、はっきり出ました
牛肉が強い順に上位10市です。
- 山口市 0.41 / 北九州市 0.41 / 京都市 0.40
- 和歌山市 0.39 / 奈良市 0.39 / 堺市 0.39
- 福岡市 0.37 / 広島市 0.37 / 大阪市 0.37 / 神戸市 0.37
近畿、中国、四国、九州。10市すべてが西日本です。
豚肉が強い順の10市も見てみます。
- 新潟市 0.11 / 盛岡市 0.14 / 福島市 0.14 / 長野市 0.14 / 秋田市 0.14
- 前橋市 0.15 / 札幌市 0.17 / 浜松市 0.17 / 仙台市 0.18 / 宇都宮市 0.18
こちらは10市すべてが東日本と北日本です。
きれいに割れました。言い伝えは正しかった、で終わりそうな話です。
ただし、西日本でも豚肉の方が多い
ここからが本題です。
いちばん牛肉が強い山口市の数字を見てください。牛肉7,678g に対して、豚肉18,565g。 比率にすると、豚肉の方が2.4倍多いのです。
52市の中で最も牛肉に寄っている街ですら、豚肉を牛肉の2倍以上買っています。
全国平均は牛肉5,594g、豚肉22,006g。日本全体では、豚肉が牛肉の3.9倍です。
つまり「西は牛肉文化」というのは、正確ではありません。日本はどこでも豚肉の国で、西日本はそこに牛肉が少し混ざる。 東西の違いは、種類の違いではなく、程度の違いでした。
いちばん差が開いているのは新潟市です。牛肉3,022g に対して豚肉27,169g。9倍あります。
境目は、岡山と横浜のあいだ
52市を並べたとき、順位が入れ替わるのは26位と27位のところです。
- 26位 岡山市 0.29
- 27位 横浜市 0.28
ここから上が西日本中心、ここから下が東日本中心になります。地図の上では、中国地方と近畿の東端あたりに線が引けることになります。
面白いのは、線をまたいでいる街です
山形市が22位。 東北6県で唯一、牛肉側にいます。
農林水産省の記録を見ると、理由らしきものが書いてあります。山形県の郷土料理「芋煮」は、牛肉を使います。里芋、牛肉、こんにゃく、ねぎ。
そして芋煮は、記録によれば「里芋の収穫期の秋から冬によく食べられている」もので、山形では芋煮会が「新年会や忘年会と並ぶ年間行事」だとされています。いまがちょうどその季節です。
反対に、鹿児島市は30位。九州でありながら豚肉側にいます。こちらも郷土料理を見ると納得できます。鹿児島県には豚を使う郷土料理が6品(豚骨、豚汁、豚味噌など)記録されている一方、牛を使うものは0品でした。
福井市は15位で、中部地方ながら西日本側です。北陸のなかでは関西に近い位置にいます。
説明がつかないものもあります
沖縄県は、農林水産省の記録にある郷土料理のうち豚を使うものが11品あり、全国で最多です。ラフテー、ソーキ汁、ミミガー、中身汁。豚の県という印象があります。
ところが那覇市の豚肉購入量は19,778gで、全国平均の22,006gを下回っています。
家計調査が記録するのは家庭で買った量です。外食や加工品として食べている分は入りません。沖縄の豚は、そこに現れていないのかもしれません。ただ、これは推測です。数字が言っているのは「家庭での購入量は平均より少ない」ということだけで、それ以上のことは、この統計からは分かりません。
まとめ
- 「西は牛、東は豚」は、傾向としては正しい。上位10市・下位10市がきれいに分かれた
- ただしどこでも豚肉の方が多い。最も牛肉寄りの山口市でも豚が2.4倍。全国では3.9倍
- 境目は岡山と横浜のあいだ
- 山形(芋煮に牛肉)と鹿児島(郷土料理に豚6品)は、線をまたぐ理由が郷土料理の記録から読める
各都道府県が何を全国平均の何倍買っているかは、47都道府県のページにすべて載せてあります。秋に食べられている郷土料理はこちらです。
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」2023〜2025年平均。郷土料理は農林水産省「うちの郷土料理〜次世代に伝えたい大切な味〜」より、日本うまいもん番付が加工して作成。