2026年9月2日
ふるさと納税、地元の人が本当に食べているものを選ぶ
総務省の家計調査を見ると、その土地の人が全国平均の何倍買っているかがわかる。名物として有名かどうかとは、別の数字です。返礼品を選ぶ手がかりとして並べてみました。
ふるさと納税のサイトを開くと、返礼品はたいてい「名物」で並んでいます。その土地で有名なもの、観光で食べられているもの。それ自体は間違っていません。
ただ、名物であることと、その土地の人が日常的に台所で買っていることは、同じではありません。そして後者は、実は数字で見ることができます。
全国平均の何倍買っているか
総務省統計局の「家計調査」は、県庁所在市と政令指定都市ごとに、1世帯が1年間にどの食材をどれだけ買ったかを調べています。ここから、全国平均に対する倍率が出せます。
数量ベースで見ると、こうなります。
- しじみ 10.28倍 — 松江市(島根県)。年間2,055g、全国平均は200g
- 桃 8.91倍 — 福島市(福島県)。9,358g、全国平均1,050g
- かに 7.77倍 — 鳥取市(鳥取県)。2,760g、全国平均355g
- ほたて貝 5.85倍 — 青森市(青森県)。1,779g、全国平均304g
- かつお 4.31倍 — 高知市(高知県)。3,574g、全国平均829g
10倍というのは、かなり異常な数字です。全国の家庭が年に200g買うものを、松江の家庭は2kg買っている。観光客が食べているのではなく、そこに住んでいる人が、そういう量を買っています。
郷土料理と重なると、たしからしくなる
もうひとつ、農林水産省が「うちの郷土料理」として全国1,365品を記録しています。統計の数字と、この郷土料理が重なる土地があります。
島根県には「しじみ汁」が郷土料理として載っています。高知県には「かつおのたたき」があります。買っている量が多く、料理としても伝わっている。両方そろっていれば、それはその土地の日常の食だと考えていいはずです。
ここまでは、わりと予想どおりの話です。
しじみ汁は、滋賀県にもある
面白いのはここからでした。
農林水産省の記録を見ると、「しじみ汁」は滋賀県の郷土料理でもあります。琵琶湖のセタシジミを使う料理として、県内全域に伝わっていると書かれています。
では滋賀県の数字はどうか。大津市のしじみは、年間92g。全国平均の0.46倍で、調査対象52市のうち46位です。松江市の22分の1しかありません。
郷土料理として伝わっているのに、今は全国平均の半分も買っていない。
理由も、同じ資料に書いてある
なぜこうなるのか。農林水産省の説明文を読むと、答えがそのまま書いてありました。
- 滋賀県のしじみ汁 — 使うのはセタシジミ。漁獲時期は3月から4月で、春先に旬を迎えると記されています
- 島根県のしじみ汁 — 使うのはヤマトシジミ。年間を通じてとれるため、日常的に食べられていると記されています
旬が春の一時期に限られるものと、一年中とれるもの。この違いが、そのまま家計簿の数字になって出ていました。滋賀のしじみ汁は、季節の料理として残っている。島根のしじみ汁は、日常の汁物として続いている。
同じ料理名でも、暮らしの中での位置がまるで違います。
返礼品を選ぶときの手がかりとして
ここから言えることは、たぶんこのくらいです。
- 数字が跳ねている土地のものは、地元で日常的に食べられている可能性が高い
- 郷土料理として残っているだけでは、今も食べられているとは限らない
- 逆に、数字が高いのに有名でないものは、まだ知られていないだけかもしれない
たとえば水戸市のしじみは3.61倍あります。茨城のしじみは、島根や青森ほど知られていないと思います。それでも全国平均の3倍以上、地元の家庭が買っています。
秋なら、かつお
いまは9月です。農林水産省の記述によると、かつおは「秋の下りカツオが脂がのっていて、たたきには最適」とされています。高知市のかつおは全国平均の4.31倍。数字と旬が両方そろう、いまがちょうどいい時期です。
秋に食べられている郷土料理は、全国で313品あります。秋の郷土料理にまとめてあります。
12月に慌てないために
ふるさと納税は12月に集中します。締め切り前に慌てて選ぶと、どうしても見出しの大きいもの、写真のきれいなものになります。
時間があるうちに、数字を手がかりに選んでみるのも悪くないと思います。47都道府県のページに、その土地で何が何倍買われているかを全部載せてあります。
出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」2023〜2025年平均。郷土料理は農林水産省「うちの郷土料理〜次世代に伝えたい大切な味〜」より、日本うまいもん番付が加工して作成。